靖国神社参拝はなぜいけない?問題視される理由をわかりやすく解説

靖国神社参拝をめぐっては、毎年のように国内外で大きな議論を呼びます。

しかし、「なぜ靖国神社参拝はいけないの?」と疑問に思う方も多いはず。

この記事では、参拝が問題となる理由や、歴史的背景、他国の反応、国内での意見などをわかりやすく解説します。

目次

毎年議論される靖国神社参拝問題

靖国神社参拝は、毎年のように国内外で大きな議論を呼びます。

特に、内閣総理大臣や政府関係者が参拝や供物を奉納すると、中国や韓国などの近隣諸国から強い反発が起こります。

その結果、外交問題に発展するケースも少なくありません。

一方、日本国内では、「戦没者を悼む行為」として肯定的に見る声もあります。

しかし、「戦争責任者を祀る神社への参拝は不適切だ」という批判的な意見も根強く、賛否が繰り返されているのが現状です。

2025年は小泉進次郎氏などが参拝

2025年8月15日、終戦の日に合わせて、小泉進次郎農林水産大臣が靖国神社を参拝しました。

石破政権の閣僚の中では初の参拝となり、報道陣の問いかけには無言を貫きました。

この他にも、以下のような方が参拝しています。

  • 小林鷹之・元経済安全保障担当大臣
  • 萩生田光一・元文部科学大臣
  • 日本保守党の百田尚樹代表
  • 参政党の神谷宗幣代表

一方、石破首相は参拝を見送り、自民党総裁として玉串料の奉納にとどめる見通しです。


靖国神社参拝はなぜいけない?問題視される主な理由

靖国神社参拝が「いけない」と問題視されるのには、いくつかの明確な理由があります。

ここでは、主な理由3つをご紹介します。

● 戦争責任者を祀っている点

靖国神社には、第二次世界大戦のA級戦犯とされた人物14名が合祀されています。

A級戦犯とは、戦争を計画・指導したとして極東国際軍事裁判(東京裁判)で裁かれた人々。

国際的には「戦争犯罪人」と認識されています。

そのため、政府関係者が靖国神社を参拝すると、戦争を肯定しているかのような印象を与えてしまうのです。

● 戦争被害国への配慮の欠如

靖国神社参拝が行われると、特に中国・韓国といった戦争被害国から強い反発が起こります。

これらの国々にとって、靖国神社は日本の過去の軍国主義を象徴する存在です。

政府高官が公式に参拝すれば、

「日本は過去を反省していない」

と受け取られ、国際的な信頼関係に悪影響を及ぼすことになります。

実際、過去にも参拝によって首脳会談が中止されたケースもあり、外交リスクが非常に高い行動とされています。


● 政教分離の原則との関係

日本国憲法第20条の「政教分離の原則」では、国家と宗教は明確に分けることが求められています。

靖国神社は、宗教法人として神道に基づいた儀式を行う宗教施設です。

そのため、内閣総理大臣や閣僚といった国家権力を持つ人物が参拝することは、政教分離に反する可能性があると指摘されます。

特に「公人」として参拝する場合には、国の宗教的中立性が問われるため、問題視されるのです。

靖国神社とはどんな神社?

靖国神社は、国の戦争政策や政治とも密接に関係してきた存在です。

明治時代に創建された背景

靖国神社は、1869年(明治2年)に、明治政府によって「東京招魂社(とうきょうしょうこんしゃ)」として創建されました。

目的は、明治維新で戦死した官軍側の兵士たちを慰霊・顕彰することです。

その後、1879年に「靖国神社」と改称

国家によって管理される“国営の慰霊施設”となりました。

このように、最初から国家による戦没者追悼のための施設だった点が、他の神社とは大きく異なります。


● 国家による戦没者顕彰の仕組み

靖国神社に祀られているのは、戊辰戦争から太平洋戦争までの戦争で戦死した軍人などです。

その数は、約246万人

戦争により命を落とした兵士たちを、

「国家のために殉じた英霊」

として称える仕組みがつくられ、遺族にとっては重要な精神的支えでもありました。

しかし、この仕組みは、国家が特定の価値観に基づいて死者を選別し、祭るという側面を持っており、戦後はさまざまな議論を生む要因となっています。

● 軍国主義との関係性

特に問題とされてきたのは、靖国神社が戦時中に軍国主義を支える“象徴的存在”だったことです。

これは、出征前の兵士たちが参拝し、「靖国で会おう」という言葉が交わされたことに象徴されています。

このように、靖国神社は戦意高揚の場としても利用されてきました。

また、戦後にA級戦犯が合祀されたことで、さらに、軍国主義を美化する施設だと受け取られるようになったという経緯も。

このような理由から、特に海外からの批判が集中するようになったのです。


靖国神社に祀られている人物とは?

靖国神社には、日本の歴史に深く関わる多くの人物が祀られています。

その中には、戦争責任を問われたA級戦犯と呼ばれる人々も含まれており、これが靖国神社参拝が問題とされる大きな理由のひとつです。

A級戦犯とはどんな人?

A級戦犯とは、第二次世界大戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)によって、

「平和に対する罪(戦争の計画・実行)」で有罪判決を受けた、旧日本の指導者たちのことです。

代表的な人物には以下のような人たちがいます。

①東條英機(元首相・陸軍大将)

東條英機

太平洋戦争開戦時の日本の首相であり、戦争を主導した中心人物

広田弘毅(元外相)

広田弘毅
広田弘毅

日独伊三国同盟の基礎を築いた元首相で、戦争責任を問われA級戦犯として処刑

③板垣征四郎(陸軍大臣) 

板垣征四郎

陸軍大臣や参謀本部次長を務めた軍人で、満州事変を主導し、戦争責任を問われたA級戦犯

彼らのようなA級戦犯は、1978年に靖国神社に、ひそかに合祀(神としてまつること)されました。

この事実が明るみに出ると、国内外で強い反発が起こりました。

とくに中国・韓国などの戦争被害国では、「戦争責任者を神として祀るのは受け入れがたい」として、政治家の参拝を強く批判する立場を取っています。

一般兵士も祀られている

靖国神社には、A級戦犯だけでなく、戦死した多くの一般兵士や軍属も祀られています。

そのため、

  • 「祖父が祀られているから参拝したい」
  • 「英霊に感謝の気持ちを伝えたい」

と考える遺族や日本国民も多くいます。

しかし、A級戦犯と一般兵士が同じ神社に祀られていることが、靖国神社の性格を複雑にしています。

参拝が「誰に対しての敬意なのか」が不明確になることで、国内外での誤解や対立の原因になっているのです。

他国からの反応と外交問題

靖国神社参拝は、日本国内だけでなく、中国・韓国などの近隣諸国との外交関係にも影響を与える重要な問題です。

戦争の加害者・被害者という立場の違いから、参拝が行われるたびに、国際的な批判や外交的な緊張が発生しています。

中国・韓国の主な批判内容

●歴史認識の違い

中国や韓国が靖国神社参拝に強く反発する背景には、歴史認識の根本的な違いがあります。

これらの国々では、靖国神社を

「戦争責任をあいまいにし、加害の歴史を正当化する場所」

として見ており、参拝行為そのものが過去の侵略戦争を肯定する姿勢だと受け取られるのです。

日本側は「戦没者の慰霊」と説明するものの、被害国にとっては謝罪よりも美化が優先されているように映るため、深い不信感につながっています。

● 過去の侵略戦争への態度

特にA級戦犯が祀られている事実が、中国・韓国にとっては大きな問題です。

この点に対して、

「日本は本当に過去を反省しているのか?」

という疑問が繰り返し提起されてきました。

さらに、日本国内での右派的な発言や歴史修正主義的な動きと合わせて、靖国参拝はナショナリズムの象徴的行為と捉えられることが多いです。


外交問題に発展した事例

靖国神社参拝が実際に外交問題に発展した事例は、これまでにも多数あります。

● 小泉純一郎元首相の参拝

2001年から2006年までの間、小泉純一郎元首相は在任中に6回も靖国神社を参拝しました。

この行為は中国・韓国の強い反発を招き、日中・日韓の首脳会談が中止される事態にまで発展しました。

さらに、両国の市民からも抗議デモや不買運動が起こり、政治・経済両面で深刻な影響が出ました。

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● 国際会議のボイコットや非公式対応

その他にも、首相や閣僚の靖国参拝によって、国際会議での冷遇政府間協議の延期・中止など、外交の場での支障がたびたび発生しています。

中国や韓国は、

「靖国参拝を行う限り、公式な交流は難しい」

と表明しており、信頼関係の回復を妨げる要因にもなっているのです。


日本国内の賛否両論

靖国神社参拝をめぐっては、日本国内でもさまざまな意見が存在します。

「国のために命を捧げた人々を敬うべき」と考える人もいれば、「戦争責任や憲法との矛盾がある」として反対する人もいます。

ここでは、賛成派・反対派それぞれの主張と、宗教と政治の関係について解説します。

賛成派の意見

● 英霊への敬意を表す場として

賛成派の多くは、靖国神社を「国のために戦った人々(英霊)に敬意を表す神聖な場所」ととらえています。

靖国神社への参拝は感謝と慰霊の行為であり、政治的な意図ではないという立場です。

「国のリーダーが英霊に敬意を示すのは当然だ」という考えも根強くあります。

● 内政問題としての立場

また、「靖国神社参拝は国内の問題であり、他国が口を出すべきではない」という声もあります。

外交的な配慮よりも、国の主権と信教の自由を優先すべきという主張です。

この立場では、参拝に対する外部からの批判を「内政干渉」ととらえることが一般的です。


反対派の意見

● 国際的イメージの悪化

反対派が特に懸念しているのは、参拝による国際的な信頼の低下です。

A級戦犯が祀られている靖国神社を政治家が参拝することで、

日本が過去の戦争を正当化しているかのように映るとされ、外交関係が悪化する恐れがあります。

● 憲法との整合性の問題

さらに、反対派は憲法との整合性も問題視しています。

靖国神社は宗教法人であり、そこを政府関係者が参拝することは、

政教分離の原則(憲法第20条)に反する可能性があるとされています。

「個人としての参拝なのか、公人としての行為なのか」という曖昧さが、批判を生む原因にもなっています。


宗教と政治の関係

● 政教分離とは何か

日本国憲法第20条では、宗教と政治を明確に分けるべきと定めています。

これは、特定の宗教が国家の意思決定に影響を及ぼさないようにするための原則です。

靖国神社は神道に基づく宗教施設であり、公職にある人物が関与することは、中立性を損なうおそれがあると指摘されています。

● 政治家の参拝の是非

政治家の参拝については、「私人として行った」と説明されることが多いですが、実際には公式の立場として受け取られるケースがほとんどです。

そのため、メディア報道や外交上の反応でも、「日本政府の姿勢」として扱われることがあり、繊細な対応が求められます。

靖国神社参拝がなぜいけない?のまとめ

この記事のまとめ

この記事では、靖国神社参拝がなぜいけないとされるのかについて解説しました。

靖国神社参拝は、歴史、宗教、外交、政治など多くの問題が複雑に絡み合っています。

この記事の内容をまとめると、以下のとおりです。

  • 靖国神社は明治時代に創建された戦没者の神社
  • A級戦犯の合祀が国際問題の火種に
  • 近隣諸国は参拝を強く批判
  • 日本国内でも賛否が大きく分かれる
  • 政教分離との関係も注目点

靖国神社参拝は、複雑な問題だからこそ、正しい知識を持って考えることが大切です。

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