ユニクロが「万引犯に対して損害賠償を請求する」と発表し、大きな注目を集めています。
「損害賠償って、裁判とかでお金かかるんじゃないの?」「他の企業もやるの?」と、気になる人も多いはずです。
この記事では、ユニクロの判断の背景や、損害賠償請求のメリット・デメリット、他の業界への影響まで、わかりやすく解説します。
ユニクロが損害賠償請求を決断した理由

ユニクロが打ち出した「万引犯への損害賠償請求」は、決して話題作りではありません。
その背景には、見過ごせないほど深刻な実情があるのです。
万引被害は年間3460億円
全国の小売業界では、万引による被害額が、年間約3460億円に達すると言われています。
この膨大な損失は、最終的に商品の価格として、私たち消費者にも影響しています。
外国人グループによる組織的犯行が続発
特に目立つのが、外国人グループによる大規模な万引です。
なかでも、ベトナム国籍の集団が関与するケースが急増し、ユニクロの各店舗でも被害が相次いでいます。
1つのグループだけで、被害総額が1000万円を超える例も報告されています。
刑事告訴だけでは抑止できなかった背景
これまでは、ユニクロも万引に対して、警察への通報にとどまっていました。
しかし、それでは根本的な解決にはならず、被害は後を絶ちません。
そこでユニクロは、「損害賠償請求」という民事手続きを取り入れることで、より強い抑止力を持たせようと動き出したのです。
この決断は、ユニクロの安心して買い物できる店舗づくりへの本気の姿勢とも言えるでしょう。
損害賠償は本当に効果的なのか
損害賠償請求と聞くと「裁判費用がかかるのでは?」と思う人も多いでしょう。
実際に、費用が発生するのは事実ですが、それでもユニクロがこの手段を選ぶ理由があります。
手続きや人件費で費用倒れの懸念も
損害賠償請求には、それなりのコストがかかります。
たとえば、弁護士への依頼料、裁判費用、そして社内での書類作成や証拠整理などにかかる人件費も無視できません。
さらに、加害者に、十分な支払い能力がない場合、せっかく勝訴しても賠償金を回収できないというリスクも存在します。
こうした点から、「かえって損するのでは?」と慎重になる企業も多いのが現実です。
ユニクロのような大手でさえ、コストとのバランスは重要な判断材料だったはずです。
それでも賠償に踏み切る企業の本音とは
それでもユニクロが損害賠償請求に踏み切ったのは、金銭的な損害回収だけが目的ではありません。
最大の狙いは、「万引は絶対に許されない行為である」と社会に強く示すことでしょう。
民事での請求を行うことで、万引を計画する人物にとって「捕まると後が厄介」という印象を与え、犯罪の抑止力とするのが狙いです。
実際、「訴えられるかもしれない」と知れば、軽い気持ちでの犯行を思いとどまる人は増えると考えられています。
企業としての毅然とした姿勢が問われているのです。
20年実践する書店チェーンの成功例
東海地方を中心に展開する三洋堂書店では、約20年前から万引犯に対して損害賠償請求を行っています。
商品の実費だけでなく、従業員が警察対応に費やす時間まで「人件費」として請求。
これにより、導入前は1.1%だった不明ロス率が、現在では0.5%台にまで改善しました。
さらに、回収した賠償金の一部は万引対策の支援団体に寄付するなど、社会的な好印象にもつながっています。
こうした実例は、ユニクロが損害賠償請求を導入するうえで大きな参考になった可能性があります。
万引防止に効果的な対策とは
ユニクロは損害賠償請求だけでなく、現場での対策にも力を入れています。
防犯カメラや声かけの重要性
万引を未然に防ぐためには、「監視されている」と思わせる環境づくりが欠かせません。
ユニクロでは、防犯カメラの設置や死角の少ないレイアウトを採用し、従業員が積極的に声をかけることで、犯行の抑止効果を高めています。
「いらっしゃいませ」という一言も、万引犯にとってはプレッシャーになります。
こうした基本的な対策こそが、現場での防犯力を大きく左右するのです。
「ロス対策士」など専門資格の活用も
書店業界では、損失を防ぐ専門資格「ロス対策士」を導入し、店舗運営に活かしている企業もあります。
この資格は、万引などによる不明ロスの原因を分析し、具体的な防止策を講じる知識と実践力を備えた人材を育成するものです。
ユニクロのような大手が防犯意識を高めるなかで、こうした専門資格の取得や教育体制の整備は、今後さらに重要性を増していくでしょう。
他の小売業界への波及はあるのか

ユニクロの動きは、他の小売業にも影響を与える可能性があります。
今後増える?業界団体の見解
全国万引犯罪防止機構によると、損害賠償請求を行う企業は、今後確実に増えると見られています。
これまでは「手間がかかる」「やり方がわからない」といった理由から消極的な企業が多かったものの、ユニクロのような大手が実際に動いたことで、他社も動きやすくなるというわけです。
特に、同じように万引被害に悩む業界にとっては、大きな後押しとなるはずです。
スーパー・コンビニ・ドラッグストアはどう動く?
スーパーやコンビニ、ドラッグストアは、日常的に万引が発生しやすい業態です。
人手不足やセルフレジの導入により、防犯面の負担も大きくなっています。
ユニクロのように損害賠償請求を導入することで、犯罪抑止につながる可能性は高く、今後、こうした業種でも同様の動きが加速するかもしれません。
業界全体で「万引は損をする」という認識が広がるきっかけとなりそうです。
まとめ
ユニクロが打ち出した「万引犯への損害賠償請求」は、防犯対策としても、企業姿勢としても、大きな転換点となる動きです。
この方針は単なる損失回収にとどまらず、「万引を社会全体で許さない」というメッセージとしても強く響いています。
今後は、他の小売業界にも波及し、業界全体の防犯意識の底上げが期待されます。
この記事のポイントをおさらいすると:
- ユニクロが損害賠償請求に踏み切った背景には、深刻な万引被害の現実がある
- 損害賠償にはコストがかかるが、犯罪抑止や企業姿勢としての効果が高い
- 書店チェーンの成功例からも、その実効性が示されている
- 防犯カメラや声かけ、専門資格など、現場での対策強化も欠かせない
- ユニクロの動きが、コンビニやドラッグストアなど他業種にも影響する可能性がある
万引は「少しだから」と見逃されがちな軽犯罪ですが、その裏にある損失は社会全体に及んでいます。
企業も私たち消費者も、防犯に対する意識を高めていくことが求められています。