中国で長年にわたりビジネスを展開してきたアステラス製薬の幹部・西山寛氏。
2025年7月に、中国でのスパイ容疑で実刑判決が下りました。
この記事では、アステラス製薬の西山寛氏の人物像や事件の経緯を説明。
そして背後にある中国の「反スパイ法」のリスクについても詳しく解説します。
中国でスパイ容疑 西山寛氏に実刑判決確定
アステラス製薬の幹部・西山寛氏が、中国当局にスパイ容疑で起訴されました。
2025年7月16日、中国の裁判所は、西山氏に懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡しました。
男性は罪を認め、処罰を受け入れる意向を示しており、控訴は行わず、判決は確定。
アステラス製薬や日本政府は、事件の詳細や判決内容について、一切コメントを控えています。

今回のスパイ事件は、日本企業の中国展開に強い警戒感をもたらす出来事となっています。
アステラス製薬・西山寛氏の経歴とは


西山寛氏は、長年にわたりアステラス製薬の中国法人で幹部を務めてきた人物です。
西山寛氏の以下のような経歴が確認されています。
- 中国・北京に2度駐在(直近は約4年)
- 中国日本商会の副会長を歴任
- 中国の医療行政や製薬業界に詳しい
- アステラス製薬アジア事業本部の講演実績あり(2010年)
特に注目されるのは、中国ビジネスとの深い関わりです。
2010年には「中国の医療行政と製薬業界」に関する講演も行い、日中双方の経済界から信頼を集めていました。



アステラス製薬の中国戦略を支えたキーパーソンとして、現地でのネットワークや影響力も大きかったと考えられます。
どんな事件だったか?スパイ事件概要


スパイ事件の概要と経緯、今後の見通しについて詳しく整理します。
スパイ容疑の具体的内容
西山寛氏が問われた罪は、中国の「反スパイ法」違反です。
中国側の判決によると、西山氏は日本の情報機関から依頼を受け、報酬を得て情報収集を行っていたとされています。
ただし、スパイ行為の具体的な証拠や活動の詳細については、明らかにされていません。



このため、反スパイ法の不透明な運用が国際的にも批判されており、外国人ビジネスマンへの恣意的な摘発ではないかとの懸念も出ています。
スパイ事件の経緯まとめ【時系列】
アステラス製薬の幹部である西山寛氏が、中国でスパイ容疑により拘束・起訴・実刑判決を受けるまでの流れを、以下に時系列で整理します。
日付 | 出来事 |
---|---|
2023年3月下旬 | 北京駐在勤務を終え、日本への帰国準備中に消息不明に |
数日後 | 中国外務省が「スパイ容疑で拘束」と発表 |
〜2025年7月 | 約2年半にわたり拘束されたまま裁判が続く |
2025年7月16日 | 懲役3年6カ月の実刑判決が確定。控訴は行わず |
実刑確定後の見通し
今回の判決により、西山寛氏は中国国内での服役が確実となりました。
通常は、実刑判決に基づき、引き続き中国の刑務所での収監が行われると見られます。
また、服役後も出国禁止や行動制限が継続される可能性があり、自由な帰国は容易ではない状況です。
中国「反スパイ法」とは?ビジネスマンにも及ぶリスク


アステラス製薬の西山寛氏の実刑判決の背景には、中国で強化されている「反スパイ法」があります。
反スパイ法は、外国人駐在員やビジネス関係者にとっても、思わぬ拘束リスクを伴う法制度として国際的に注目されています。
ここでは、反スパイ法の概要や、どのような行為が処罰対象となるのかを解説します。
反スパイ法の概要と改正内容
中国の反スパイ法(国家安全法)は、2014年に施行。
その後、2023年7月1日に大幅改正が実施され、その内容が大きな波紋を呼んでいます。
改正によって、以下のような変化がありました。
- 「スパイ行為」の定義が拡大
- 機密でない情報の取得も違法とされる可能性
- デジタルデータや業務資料も対象に
- 外国人への監視強化・通報奨励制度も導入



つまり、一般的なビジネス活動や情報収集ですら、スパイと見なされる恐れがあるということです。
処罰の対象となるスパイ行為とは?
改正された反スパイ法では、以下のような行為がスパイ行為として処罰の対象になります。
- 国家機密・重要情報の取得や提供
- 国家安全を脅かす活動への協力
- 外国機関・組織・個人への情報流出
- 軍事施設や政府機関の撮影・記録
- 通常のビジネス上の資料提供・調査活動(と見なされる場合)
このように、曖昧な基準でスパイ認定されるリスクが指摘されています。
日本人も標的に。これまでに17人が拘束
日本政府によると、これまでに少なくとも17人の日本人が、中国で「スパイ容疑」により拘束されました。
現在も、男性を含む5人の日本人が帰国できず、中国国内に留め置かれたままです。



こうした状況は、日本人がスパイの標的となるリスクが現実のものとなっていることを示しています。
中国の反スパイ法に対する国際的な懸念
中国の反スパイ法に対しては、各国から深刻な懸念の声が上がっています。
特に、以下のような問題点が指摘されています。
- 法の適用範囲が広すぎる
- 拘束・起訴までの手続きが不透明
- 弁護士へのアクセス制限、家族への連絡遮断
- 国際的なビジネス環境を損なうリスク
- 外国企業・駐在員にとっての萎縮効果



今後も、日本企業や海外駐在員が中国で拘束されるリスクは、さらに高まる可能性があります。


まとめ:西山寛氏事件が示す中国ビジネスの危うさ


アステラス製薬の西山寛氏に対するスパイ容疑と実刑判決は、日本企業にとって中国ビジネスの新たなリスクを浮き彫りにしました。
- 通常の業務がスパイと見なされる可能性
- 反スパイ法の拡大適用による拘束リスク
- これまでに17人の日本人が同様に拘束
今後、企業・駐在員ともに、情報管理と行動への警戒が欠かせない時代に入ったと言えるでしょう。

