釧路市動物園で暮らすアムールトラ「ココア」は、生まれつき四肢に障がいを抱えながらも、16年間多くの来園者に愛されてきました。
懸命に生きる姿に全国から共感と応援の声が寄せられている中、2025年4月、体調悪化のため展示を中止し、現在は静養に専念しています。
この記事では、ココアのこれまでの歩み、展示中止に至るまでの経緯、そして多くの人々の想いについてお伝えします。
障害を抱えながら生きてきたアムールトラ・ココアの軌跡
釧路市動物園で暮らすアムールトラ「ココア」は、生まれつきの障がいと向き合いながら、16年という長い歳月を懸命に生きてきました。
その姿は、訪れる人々に勇気や感動を与え、今や全国的に応援される存在となっています。
生まれつき障がいを抱えていた
ココアは、四肢に先天的な障がいを抱えて生まれました。
特に後ろ足には明らかな機能不全があり、年齢を重ねるごとにその影響は大きくなっていきました。
トラとしては不利な身体でも、彼女は静かに、しかし確かに、生きる力を示し続けてきたのです。
釧路市動物園の人気者
障がいがありながらも、自力で歩いたり、時には屋外の放飼場に出たりと、健気な姿を見せるココアは、釧路市動物園の名物的存在でした。
その様子に心を動かされた来園者も多く、SNSなどで写真やメッセージを投稿する人が次第に増えていきました。

実は私も、何年か前に釧路市動物園でココアに会ったことがあります。ゆっくりと歩く姿に、ただ「かわいい」では言い表せない、命の尊さを感じたのを今でも覚えています。
16歳の今、体調に変化が
2024年の年末頃から、ココアの体調に変化が現れ始めました。
後肢で立ち上がるのが難しくなり、寝て過ごす時間が増加。便秘や食欲の減退、さらには皮膚炎などの症状も重なり、次第に活力が落ちていきました。
それでも、ココアは自らの意思で「行きたい場所」に移動する姿を見せ、訪れた人々の胸を打ちました。
ココアの現在は?展示中止に至った経緯
2025年春、釧路市動物園はココアの展示を中止し、治療に専念することを発表しました。
その背景には、彼女の体調を巡る深刻な変化と、それでも「生きる力」を失わないココアの姿がありました。
食欲不振が続く
ココアは2024年末から、後肢の麻痺により立ち上がることが難しくなり、徐々に移動が困難な状態に。
後肢を引きずって移動するため、擦り傷が増え、さらに尿の付着による皮膚炎も発生していました。
体重の減少や食欲の低下も見られ、2025年3月末には、これまで完食していた肉片を残すようになったといいます。
釧路市動物園は、これらの症状が単なる発情期による一時的なものではなく、明らかな体力の衰えであると判断。
ココアが穏やかに療養できるよう、4月8日から展示を中止し、バックヤードでの静養体制へと切り替えました。
飼育スタッフの献身的なケア
体の自由が効かなくなっても、できるだけ快適に過ごしてほしい――。そんな想いから、飼育スタッフたちは寝床の環境にも細心の注意を払っています。
なかでも注目されたのが、東洋紡エムシー株式会社が寄贈した専用マットの導入です。
このマットは、通気性・通水性に優れ、爪が引っかかりにくく、擦り傷の悪化を防ぐために特別設計されたもの。
初めは慣れなかったココアも、次第にマットの上で過ごすようになり、今ではその上で静かに横たわる姿が日常となっています。
静かに暮らす今のココア
現在、ココアの居室にはシャッターが下ろされ、外から姿を見ることはできません。
しかし、その中では飼育員や獣医師が交代で治療を続け、マットや衛生管理を徹底しながら、ココアの「今日を生きる力」を支え続けています。
日々の容体は決して安定しているとはいえませんが、それでも彼女は、自分のペースで呼吸し、目を開け、少しでも動ける時には「落ち着く場所」へ自分で移動しようとしています。
その健気な姿に、多くの人が「また会える日を信じて」祈りを届けています。
全国から届く応援の声
展示中止の発表をきっかけに、ココアのもとには全国から驚くほど多くの応援メッセージが寄せられました。
障がいを抱えながらも懸命に生きるその姿は、釧路だけでなく、日本中の人々の心に届いていたのです。
SNSで650件以上の応援メッセージが殺到
釧路市動物園が2025年4月、ココアの展示中止をSNSで発表したところ、その投稿にはわずか数日で約650件を超える応援コメントが集まりました。
コメント一つひとつに、温かさが込められており、ココアの存在がいかに多くの人に愛されているかを実感させられます。
動物園に届けられるお守りや手紙の数々
SNSだけではありません。
手紙やお守り、励ましの言葉が書かれたカードなど、直接動物園に届けられる応援の形も増えています。
4月16日には、ココアの居室前に並べられた複数のお守りが北海道新聞にも掲載され、心を打たれた方も多いのではないでしょうか。
それらはすべて、「どうか少しでも元気でいてほしい」「痛みが和らぎますように」という願いのかたちです。
誰かが手を合わせるたびに、その想いがそっとココアのもとへ届いているように感じられます。
まとめ
釧路市動物園のアムールトラ「ココア」は、障がいと加齢に向き合いながら、自分のペースで懸命に生きる毎日を過ごしています。
今は静かに療養しながらも、たくさんの想いに囲まれて、その命の時間を紡いでいます。
- ココアは生まれつきの障がいを抱えながらも、釧路市動物園で16年間多くの人に愛されてきた
- 2025年春、体調悪化により展示を中止。現在は治療と静養に専念中
- SNSや手紙を通じて、全国から650件以上の応援メッセージが寄せられ、温かな輪が広がっている
ココアがまた元気な姿を見せてくれる日を信じて、私たちもそっと、心を寄せていきましょう。