北海道内で「見たことのない大きな白い花」が相次いで目撃され、不安の声が広がっています。
その正体とされるのが、強い毒性を持つ外来植物「バイカルハナウド」です。
触れただけで火傷や失明の危険があるため、専門家も警戒を呼びかけています。
この記事では、バイカルハナウドの特徴や見分け方、札幌市や環境省の対応をもとに、安全な対処法をわかりやすく解説します。
「これって危ない植物かも…?」と思ったとき、慌てず行動できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
バイカルハナウドとは?

バイカルハナウドの特徴やどこから来た植物なのかを紹介します。
白い花と巨大な姿が特徴
バイカルハナウドは、セリ科に属する多年草です。
草丈は2〜4メートルにもなり、遠くからでも目を引く大きさ。
バイカルハナウドの花は白く、小さな花が集まって、傘のような丸い形になります。
バイカルハナウドの直径は、1メートル近くに達し、「レースフラワーのよう」とも形容されます。
茎は太くしっかりしており、葉は大きく深い切れ込みがあるのが特徴です。
繁殖力が高く、広がりやすい
バイカルハナウドは、1株で2万個以上の種子をつけます。
バイカルハナウドの種子は、風や水、動物、人の衣類などで運ばれ、容易に拡散。
バイカルハナウドが一度定着すると、短期間で周辺に急拡大します。
原産は西アジア
バイカルハナウドの原産地は、西アジアのコーカサス地方です。
もともとは、観賞用としてヨーロッパに持ち込まれた歴史があります。
しかしその後、バイカルハナウドは、野生化して各地に広がり、現在では欧米を中心に有害外来植物として警戒されています。
バイカルハナウドの毒性やその危険性

バイカルハナウドがなぜ「危険な植物」とされているのか。
バイカルハナウドの毒性や人体への影響について、解説します。
バイカルハナウドは樹液が危険
バイカルハナウドの最大の危険は、茎や葉から出る樹液に含まれる成分です。
バイカルハナウドの樹液が皮膚に付いた状態で日光を浴びると、「光線過敏性皮膚炎」という強い炎症を引き起こします。
軽く触れただけでも、数時間後には、火傷のような赤みや水ぶくれが現れ、強いかゆみや痛みを伴います。
症状がひどい場合は、数週間にわたり傷が残ることもあります。
目に入ると失明のリスクも
さらに恐ろしいのが、バイカルハナウドの樹液が、目に入った場合です。
バイカルハナウドの樹液は粘膜にも強いダメージを与えるため、失明の危険性も。
外で作業中に目をこすってしまったり、風にあおられて液体が飛んでくるようなことがあれば、大きな事故につながる可能性もあるのです。
子どもやペットにも危険
バイカルハナウドが、公園や住宅地の近くに生えていた場合、小さな子どもやペットが興味本位で近づいてしまうリスクもあります。
とくに子どもは、花を触ったり、匂いをかいだりすることが多いため、周囲の大人が十分に注意を払う必要があります。
北海道での発見・通報事例
バイカルハナウドが北海道内で確認された事例や、通報・調査の最新情報を紹介します。
北海道大学構内で国内初確認
北海道内での最初のバイカルハナウド発見は、札幌市北区の北海道大学構内でした。
2025年6月に確認され、これが国内初の事例として大きな注目を集めました。
発見後、北海道大学は速やかに駆除作業を実施し、安全のため周辺区域への立ち入りを制限しました。
白石区「こころーど」でも40株除去
2025年7月2日には、北大から南東に約5キロ離れた白石区のサイクリングロード「白石こころーど」でも、バイカルハナウドに似た植物が40株ほど発見されました。
札幌市の職員が調査に入り、すべて除去作業を行いました。
人通りの多い場所だったため、住民の間でも不安の声が広がりました。
池田町・釧路・SNSでも広がる目撃情報
2025年7月には、、十勝地方の池田町でもバイカルハナウドに似た植物が発見されました。
農作業中に見つけたという地元の人が、Googleレンズで調べたところ、バイカルハナウドと表示されたと報告しています。
SNS上でも、バイカルハナウドを「見かけた」「写真を撮った」という投稿が増えています。
釧路では「在来種オオハナウド」との見解
釧路市立博物館では、市民からの問い合わせを受け、植物を調査しました。
学芸員の見解では、「多くは在来種のオオハナウド」だと考えられています。
オオハナウドもセリ科で見た目が似ていますが、毒性はバイカルハナウドより弱く、過剰に恐れる必要はないとしています。
なぜバイカルハナウドは北海道で拡大した?
海外からの旅行者や荷物に種子が付着し、北海道に入ってきた可能性があるといいます。
さらに、北海道の気候がバイカルハナウドの原産地に近く、成長しやすい環境だったことも、拡大の一因とされています。
バイカルハナウドに似た花は?
バイカルハナウドに非常によく似た植物に、「オオハナウド」があります。
どちらもセリ科の植物で、大型の白い花を咲かせる点が共通しています。
そのため、見慣れないと区別が難しく、多くの人が混同してしまいます。
釧路市立博物館の調査でも、市民からの通報の多くが、このオオハナウドだったと報告されています。
オオハナウドにも多少の毒性はありますが、樹液に直接触れたりしなければ、健康被害の心配はほとんどありません。
オオハナウドとの見分け方のポイント
環境省北海道地方環境事務所は、バイカルハナウドとオオハナウドを見分けるためのチェックポイントを公開しています。
次のような特徴に注目することで、ある程度の識別が可能です。
- 外側の花弁
バイカルハナウドは、外側の花弁が深く2つに裂けています。一方、オオハナウドは切れ込みが浅めです。 - 果実の模様
バイカルハナウドの果実は長さ1cmほど。模様が太く、先端がふくらんでいます。在来種の果実はもっと小さく、模様も細くなっています。 - 葉の形
バイカルハナウドの葉は、切れ込みが深く、細かいギザギザがあります。オオハナウドの葉は、切れ込みが浅く、全体的に丸みを帯びています。 - 茎の特徴
バイカルハナウドの茎は太く、節に白い毛がたまるのが特徴です。一方、オオハナウドは茎が赤っぽく、毛も少なめです。
このように、バイカルハナウドとオオナハウドは、見た目は似ていても、細部に注目すれば違いが見えてきます。
とはいえ、自信がないときは無理に判断せず、写真を撮って専門機関に相談するのが安心です。
札幌市の対応と通報のガイドライン
札幌市では、バイカルハナウドに関する市民からの通報に対応するため、調査と情報提供の体制を整えています。
ここでは、通報時の注意点や、正しい報告方法を紹介します。
「草丈1m未満」は通報不要
札幌市環境局によると、これまで寄せられた通報の多くは、在来のセリ科植物だったといいます。
中には、草丈30〜50cm程度の若い植物も多く含まれていました。
市は、「花が咲いた状態で草丈が1メートル未満のもの」は、バイカルハナウドの可能性が低いとして、通報の必要はないとしています。
混乱や重複を避けるためにも、通報前に、草丈や特徴をしっかり確認することが重要です。
通報方法と写真の撮り方
バイカルハナウドか疑わしい植物を見つけた場合は、自分で触ったり駆除しようとせず、まずは写真で記録しましょう。
撮影の際は、以下の4か所を撮ると、識別しやすくなります。
- 花のアップ
- 葉の形状
- 茎の様子
- 植物全体の姿
これらの写真を添えて、メールで市に報告してください。
通報先メールアドレス:kakkou@city.sapporo.jp
迅速な対応のためにも、写真は明るく、ピントが合った状態で撮ることを心がけましょう。
まとめ:正しい知識で冷静に対応を

バイカルハナウドは、美しい見た目とは裏腹に、触れるだけで火傷や失明のリスクがある、非常に危険な植物です。
2025年に北海道大学で発見されたのを皮切りに、道内各地で似た植物の目撃情報が相次ぎ、札幌市や環境省も調査と注意喚起を進めています。
一方、通報の多くは在来種の「オオハナウド」であり、不安や誤解が広がっているのも現状です。
見た目だけで判断するのは難しく、無理に駆除したり近づいたりせず、写真で記録し、専門機関に確認を依頼することが大切です。
正しい情報と冷静な対応が、地域の安全を守る第一歩になります。