小樽オタモイの再開発中止はなぜ?理由や計画概要をわかりやすく解説

小樽市の景勝地として知られる「オタモイ遊園地跡地」に持ち上がった再開発計画が、2025年6月に事実上の凍結となりました。

本記事では、小樽・オタモイ・再開発に関する全体像を解説しつつ、中止に至った理由と、今後の可能性についても考察します。

目次

オタモイ再開発の全体像

まずは、オタモイ再開発事業の構想を説明します。

オタモイ再開発計画が浮上した経緯

オタモイの再開発構想が動き出したのは、2021年のこと。

ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長が、小樽商工会議所に5千万円を寄付したのがきっかけでした。

この寄付金を原資に、現地調査や基本構想の立案が本格化します。

背景には、若き日にオタモイの絶景に心を打たれた、似鳥会長の強い思いがありました。

想定された施設内容

再開発構想では、主に3つの施設が整備対象として想定されていました。

  • オタモイテラス:断崖絶壁に張り出す全面ガラス張りの展望廊下を備え、絶景とスリルを同時に体感できる設計。
  • オタモイLab:展示スペースやレクチャールーム、更衣室やシャワー室も備えた複合施設。修学旅行や校外学習など、教育利用も見込まれていました。
  • 弁天テラス:海沿いに整備される2階建ての展望施設で、船着き場を併設。かつて存在した「弁天食堂」の記憶をプロジェクションマッピングで再現するアイデアもありました。

さらに、旧龍宮閣跡地からポンマイ岬までの約3.5キロにおよぶ遊歩道の整備も構想に含まれていました。

想定されていた事業費

小樽商工会議所が試算した事業費は、約15億7千万円

その高額な投資額から、一度にすべての施設を整備するのではなく、段階的な開発を求める声も多く上がっていました。

中でも「オタモイLab」のみを先行整備し、観光客の反応を見ながら徐々に開発を進める案は、現実的な代替案として注目されていました。

中止に至った決定的な理由

今回、再開発が中止となった背景には、複数の要因が複雑に絡み合っていました。

安全面の懸念

オタモイは、断崖絶壁が連なる危険な地形として知られています。

2006年には、遊歩道の一部が崩落し、それ以降、通行止めのまま

オタモイの再開発には、数十億円規模の安全対策工事が避けられず、事業の実行性を著しく低下させる要因となりました。

資金調達の難航

オタモイの再開発は、総事業費が15億円を超えると見込まれ、民間だけでの資金確保には限界がありました。

国の交付金を活用し、小樽市を中心とした事業体制の構築も検討されましたが、具体化には至らず。

小樽商工会議所をはじめとする民間主導の体制では、現実的な資金調達が困難と判断されました。

小樽市のスタンス

小樽市は、断崖地帯での施設整備にともなう安全リスクを重視

「安全性の確保が難しい」との見解から、早期の事業化には否定的な姿勢を取り続けました。

結果として、オタモイ再開発の主体として前面に立つことは避けられたかたちです。

観光都市・小樽が抱える課題

オタモイ再開発の中止は、小樽が観光都市として直面する本質的な課題をあらためて浮き彫りにしました。

日帰り観光地の現状

小樽は札幌から電車や車で1時間以内と、抜群のアクセス環境にあります。

その利便性がゆえに、訪れる観光客の多くは日帰りで小樽を後にします。

2019年度、小樽市を訪れた観光客数は699万人にのぼりましたが、宿泊者数は94万人泊にとどまりました。

観光客は多くとも、宿泊につながらない現状が、地域経済の広がりを制限しています。

滞在時間延長の必要性

小樽の観光による経済波及効果を高めるには、滞在時間の延長が不可欠です。

夜間の飲食や体験型観光など、地域資源を活かすには、日帰りでは足りません。

その解決策のひとつが、新たな魅力ある観光スポットの創出でした。

オタモイ再開発は、小樽の滞在型観光への転換を促す起爆剤として、大きな期待を集めていました。

オタモイへの期待

小樽商工会議所が委託したコンサルタントによると、オタモイ再開発が実現すれば、年間12万3千人の来場が見込まれていました。

これは既存の「小樽芸術村」などとの相乗効果によって、観光動線の拡大にも寄与するという試算です。

再開発は単なる景勝地の再整備ではなく、小樽全体の観光構造に影響を与える可能性を秘めていました。

今後のオタモイ活用の展望

計画そのものは凍結されましたが、オタモイが持つ観光資源としての価値は、いまなお高く評価されています。

再議論の可能性

オタモイ開発協議会は、「オタモイは将来性ある観光資源」との立場を堅持。

再開発の完全断念ではなく、あくまで「凍結」とし、今後も活用策を模索する姿勢を示しています。

今後の議論の進展次第では、再開発が再び動き出す可能性も残されています。

段階的実行への提案

一度に3施設を整備するのではなく、まずはアクセス性の高い「オタモイLab」だけを先行開業する案も浮上。

観光客の反応や集客状況を見極めながら、段階的に整備範囲を広げていく現実的なアプローチです。

初期投資を抑えつつ、リスクを最小限に抑える方法として注目されています。

コミュニティとの連携

オタモイの再開発の成否を左右するのは、地元との連携にほかなりません。

地域企業や住民、自治体が一体となることで、持続可能な観光資源としての活用が見えてきます。

民間の情熱と行政の支援が交差すれば、オタモイは再び観光の舞台に返り咲く可能性を秘めています。

まとめ|オタモイ再開発中止から見える本質

本記事を通して伝えたいのは、「中止=終わり」ではないという視点です。

むしろ、オタモイには新たな可能性が広がりつつあります。

この記事の内容をまとめると、以下のようになります。

  • オタモイ再開発は、約15億円規模で複数施設の整備を想定していた
  • 断崖地帯ゆえの安全対策費や、資金調達の難しさが中止の主因
  • 小樽の観光課題は「日帰り型」にあり、滞在型観光への転換が急務
  • 計画は凍結されたが、段階的整備や活用策の議論は継続中
  • 地元との連携次第で、観光資源としての再評価も十分にあり得る

再開発の頓挫は、失敗ではなく出発点かもしれません。

あなたも、オタモイのこれからにぜひ注目してみてください。

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