北海道深川市にある私立短期大学「拓殖大学北海道短期大学」が、2027年3月末をもって閉学する見通しとなりました。
長年にわたり農業や保育の分野で地域に根ざした教育を行ってきた同短大ですが、少子化による入学者減により、今年度の入学生を最後に学生募集を停止する方針を決定。
60年近い歴史の幕を閉じようとしています。
この記事では、閉学の背景をはじめ、拓殖大学北海道短期大学の教育内容、母体である拓殖大学との関係、そしてこれまで地域にもたらしてきた役割を振り返ります。
- 拓殖大学北海道短期大学の閉学発表の概要
- 拓殖大学グループの教育理念と成り立ち
- 北海道短大の学科構成と教育内容
- 地域に果たしてきた役割と課題
拓殖大学北海道短期大学が2026年度末で閉学へ|少子化が直撃

1966年に開学した拓殖大学北海道短期大学(北海道深川市)は、2026年度末(2027年3月末)で閉学する見通しとなりました。
大学側は今年(2024年)4月に入学する農学ビジネス学科の学生を最後に、募集を停止すると発表しました。
同短大は「農学ビジネス学科」と「保育学科」の2学科体制ですが、保育学科はすでに募集を停止しており、今回の発表により全学科の募集が終了します。
農学ビジネス学科の2024年度入学者は43人(定員70人)にとどまり、2025年度の志願者数も定員割れが確実視されていることから、運営継続が困難と判断されました。
大学側は「少子化による入学者数の急減が理由」と説明し、在校生については卒業まで責任を持って対応する方針です。
拓殖大学とは?国際教育に強みを持つ伝統校

拓殖大学は、東京都文京区に本部を置く私立大学で、1900年に「台湾協会学校」として設立されました。
以来、日本の対外政策や国際協力を担う人材を育成してきた歴史があり、現在は5学部・大学院を有する総合大学へと発展しています。
建学の精神は「積極進取の気概と教養・品格を備えた人材の育成」であり、とくに国際理解教育・語学教育に力を入れている点が特徴です。
14カ国語の語学教育や海外研修制度、1,000人超の留学生受け入れなど、「国際派大学」としての存在感を放っています。
北海道短大の位置付け|実学重視の地域短大
拓殖大学北海道短期大学は、その姉妹校として1966年に「北海道拓殖短期大学」として開学し、1990年に現名称となりました。
設置主体は本体と同じ「学校法人拓殖大学」であり、法人内での密接な関係にあります。
学科構成は以下のとおりで、地域社会に根ざした教育が特徴です。
農学ビジネス学科
- 環境農学コース:農業技術と環境調和を学ぶ
- 地域振興ビジネスコース:地域活性に向けた実践型ビジネス教育
保育学科(募集停止済)
- 造形表現・身体表現・幼児音楽教育の各コースで、感性と表現力を磨く教育を提供してきました。
地域と共に歩んだ57年|深川の教育拠点としての役割
同短大は、道北・道央エリアの高校卒業生にとって数少ない進学先の一つであり、農業・保育といった実務分野で地域社会を支える人材の育成拠点として機能してきました。
卒業生の多くが地元に就職し、農協、自治体、保育施設、地元企業などで地域の中核を担う存在として活躍してきたことも、深川市とその周辺地域にとって大きな財産となっています。
また、地元農業法人や保育施設との連携授業、公開講座、地域イベントへの参加などを通じて、教育と地域の架け橋としての役割も果たしてきました。
まとめ|短期大学の閉鎖は地域の学びの喪失でもある
拓殖大学北海道短期大学の閉学は、単なる「一校の終わり」ではありません。
地方における高等教育の縮小は、進学機会の減少だけでなく、地域の人材育成や産業支援にも影響を及ぼす問題です。
この記事の内容をまとめると、以下のとおりです。
- 2027年3月、拓殖大学北海道短期大学が閉学予定
- 農業と保育分野で地域に根ざした教育を実践
- 少子化による入学者減が主な要因
- 拓殖大学本体とは同じ学校法人による姉妹校
- 地域社会との連携を重視し、多くの人材を輩出
地方の教育機関が果たす役割の大きさと、その喪失の重みを、いま改めて見つめ直す時期に来ているのかもしれません。