士別に道北最大級メガソーラー建設へ|事業概要と地域にもたらすメリットを解説

北海道士別市で、道北最大級となるメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設が進もうとしています。

事業を手がけるのはカナダの再生可能エネルギー企業Amp Energy。

総面積約26万平方メートル、太陽光パネル4万枚規模の計画で、2028年の稼働を目指して工事が始まる見通しです。

再エネへの期待が高まる一方で、地域住民からは景観や農業環境への影響を懸念する声も上がっています。

この記事では、北海道士別市で進むメガソーラー計画の全体像を、事業の背景から地域への影響まで、様々な角度から解説していきます。

この記事でわかること
  • 北海道士別市で進むメガソーラー計画の概要
  • メガソーラーとは何か、その仕組みと特徴
  • メガソーラーに必要な土地面積の規模感
  • 地元にもたらされるメリットとデメリット
目次

北海道士別市で進むメガソーラー計画|道北最大出力の全貌

カナダ企業Amp Energyが進める士別市での再エネ事業。道北最大級の発電出力を誇る計画の中身に迫ります。

計画の概要|出力・面積・稼働スケジュール

今回のメガソーラー計画では、士別市内とその周辺を開発地とし、出力1万3千キロワットという道北最大規模の太陽光発電所を建設します。

開発面積はおよそ26万平方メートルに及び、太陽光パネルは約4万枚設置される予定です。

事業主体は「北海道パワーステーションズ合同会社」で、実質的にはカナダ企業Amp Energyの日本法人が主導する形となっています。

2024年7月までに土木工事を開始し、2028年9月の稼働を目指して整備が進められます

総事業費はおよそ40億円にのぼる大規模プロジェクトです。

カナダ発・Amp Energyとはどんな企業か

Amp Energyは、再生可能エネルギー分野に特化したカナダのグローバル企業で、太陽光や風力、蓄電池などを活用した電力インフラ開発を手がけています。

2009年に設立され、カナダをはじめとした北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域で多数の発電・蓄電プロジェクトを展開中です。

日本法人Amp(アンプ)は、東京に拠点を構え、今回のような地方都市での再エネ開発に注力しています。

もともとは別の日本企業(エネア・リニューアブルエナジー・マネジメント)が主導していた士別市の計画を、Ampが2024年に事業承継し、プロジェクトを本格化させました。

Ampは、「今後、日本国内においてもデータセンターや半導体工場などの進出により、再生可能エネルギーの需要はさらに高まる」と予測しており、この士別の計画もその一環とされています。

なぜ士別市が選ばれたのか

士別市がメガソーラーの建設地として選ばれた理由は、主に次の3つに集約されます。

第一に、土地の確保が容易だった点が挙げられます。

計画地の大半は市中心部から南東約9kmに位置する畑作地帯で、広大かつ比較的平坦な地形が、大規模太陽光パネルの設置に適していました。

一部は剣淵町にもまたがるため、複数の自治体にまたがる広域型の開発といえます。

第二に、再生可能エネルギー導入への市の関心と制度整備です。

士別市では2024年4月に、再エネ事業に対して「地域との調和」を求める条例を施行しており、環境と地域との共生を重視する方針が明確になっています。

市としても、一定のルールに基づいた開発が行われることを前提に協力体制をとっているとみられます。

第三に、道北エリアでの再エネ需要の高まりです。

特に今後、道内におけるデータセンターや先端産業の立地が進めば、安定した電力供給がますます重要になります。

再エネによる地域内発電は、そのニーズに応える戦略的手段でもあります。

士別市のように人口が比較的少ない地方都市においては、こうした大規模インフラ事業が将来の地域振興や企業誘致のきっかけとなることも期待されています。

メガソーラーとは?再生可能エネルギーの中核

メガソーラーは、太陽光を活用した再生可能エネルギーの中でも、特に出力規模が大きな発電方式として注目されています。

ここでは、メガソーラーの定義や他の再エネとの違い、そのために必要な広大な土地の理由について解説します。

メガソーラーの定義と仕組み

「メガソーラー」とは、一般的に出力1,000キロワット(1メガワット)以上の太陽光発電所を指します。

屋根上に設置される住宅用の太陽光発電とは異なり、野立て(地上設置)で広大な敷地に大量の太陽光パネルを並べて発電するのが特徴です。

天候や季節によって出力が変動する点が課題ではありますが、設備の運転コストが比較的低く、化石燃料を必要としないクリーンなエネルギー源として普及が進んでいます。

他の再生エネとの違いとは?

再生可能エネルギーには、太陽光のほかにも風力、水力、地熱、バイオマスなどがあります。

これらと比較したときのメガソーラーの特性は次の通りです。

  • 風力発電は風が吹いていなければ発電できませんが、太陽光は晴れ間があれば稼働可能です。
  • 水力発電はダムなどの大規模インフラが必要で立地が限られますが、太陽光は比較的柔軟な場所選定が可能です。
  • 地熱発電は安定供給が可能ですが、地下資源の調査・掘削コストが高く、環境影響評価にも時間がかかります。

一方で、メガソーラーは日照時間に依存し、夜間や悪天候時には発電できないという弱点があり、系統電力や蓄電システムとの連携が前提となります。

26万平方メートルとはどれほど広い?

今回の士別市のメガソーラー計画で用いられる敷地面積は約26万平方メートル

この数字は実感が湧きにくいため、以下のような身近な例で比較してみましょう。

  • 東京ドーム約5.5個分(東京ドーム=約46,755㎡)
  • 大通公園の約3.2倍(札幌・大通公園=約8万㎡)
  • サッカーコート約36面分(FIFA規格のコート1面=約7,140㎡)

これだけの広さを確保するには、平坦な土地がまとまって必要となり、都市部よりも地方や農村部での開発が現実的です。

なぜこれほど広い土地が必要なのか

メガソーラーでは、太陽光パネルの設置間隔を確保しながら、一定の出力を得る必要があります。

1メガワット(=1,000kW)の発電に必要な面積はおおよそ1万平方メートル前後とされており、今回の1万3千キロワット出力の場合、単純計算で13万㎡以上が必要になります。

しかし、実際にはパネル間のスペース、安全通路、機器の設置スペース、送電設備の敷地なども必要となるため、設置効率を加味して約2倍の面積が見込まれます。

つまり、士別市での26万㎡という規模は、効率的な発電と安全な運用のために不可欠なのです。

メガソーラーの地元への影響とは|期待されるメリットと課題

メガソーラー事業は、再生可能エネルギーの供給源として注目される一方、地元にとっては生活や環境に直結する問題でもあります。

ここでは、士別市での計画を例に、地域にもたらされるメリットと課題の両面を見ていきます。

地元経済・雇用・税収への波及効果

まず期待されるのは、地元経済への直接的な効果です。

今回のような総事業費40億円規模の計画では、建設期間中に土木工事や機器設置を担う作業員が地元で雇用される可能性があり、一時的な雇用創出が見込まれます。

また、資材や設備の調達、宿泊・飲食関連の消費なども地域に波及するため、地域産業への副次的な経済効果が期待されます。

稼働後には、メガソーラー設備が固定資産として課税対象になるため、自治体の税収増という形での貢献も考えられます。

これにより、地域インフラや公共サービスの充実につながる可能性もあります。

災害対策や地域エネルギー自立への貢献

次に注目されるのが、非常時の電源供給源としての役割です。

万が一の停電や災害時に、蓄電池などと組み合わせて地域に電力を供給できる体制が整えば、防災・減災の観点から大きな利点になります。

また、メガソーラーで発電された電力を、将来的に地域内で活用できる仕組みが整えば、「地産地消型のエネルギー供給」が実現します。

これは、地域のエネルギー自立を高める重要なステップとなるでしょう。

特に近年、データセンターや半導体工場など、大量の電力を必要とする施設の地方進出が進む中で、こうした再エネインフラは地域の競争力にも関わってきます。

環境・景観・農業への懸念と住民の声

一方で、地域住民からは環境や景観への影響を不安視する声も上がっています。

特に今回の計画では、広大なパネル設置により農村風景の変化が避けられません。

太陽光パネルによる地表温度の上昇や、周囲の生態系への影響も懸念されています。

また、土木工事によって水はけが変わる、土壌が流出するなど、農業への実害が生じる可能性も指摘されています。

さらに、外資系企業による開発であることから、地元との接点が少ないまま計画が進行することへの不安もあるようです。

これに対し、士別市では2024年4月に、再エネ事業に対して「地域との調和」を義務づける条例を施行。

住民との対話を促し、納得のうえでの開発が行われるよう、制度面でも整備が進められています

地域と再エネ事業者の信頼関係をどう築くかが、今後の成否を左右するカギとなりそうです。

まとめ|メガソーラーは地域と共存できるかが鍵

再エネと地域社会がともに歩むには、透明な対話と持続可能な設計が不可欠です。

この記事の内容をまとめると、以下のようになります。

  • 北海道士別市で道北最大規模のメガソーラー建設が進行中
  • メガソーラーは26万㎡以上の広大な土地を必要とする発電方式
  • 地元経済への波及やエネルギー自立など期待される効果が大きい
  • 一方で、自然環境や農業への影響を懸念する声もある
  • 地域と共存する再エネ開発には、住民との丁寧な合意形成がカギ

今後の動向に注目しつつ、地域に根ざしたエネルギーのあり方をともに考えていきましょう。

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