「きびだんご」と聞くと、岡山の桃太郎を思い浮かべる方が多いかもしれません。
でも実は、北海道にも“きびだんご”があるのをご存じでしょうか?
それを製造しているのが、函館近郊・七飯町に本社を構える老舗和菓子メーカー「天狗堂宝船」。
このお菓子、実は昭和43年年から販売されている歴史ある郷土菓子なんです。
北海道ではスーパーのお菓子売り場でもよく見かける存在で、どさんこの私は子どもの頃によく食べていた懐かしい味。
素朴でやさしい甘さが魅力で、今でも変わらず愛され続けています。
この記事では、「なぜ北海道できびだんごが作られるのか?」という素朴な疑問を出発点に、天狗堂宝船のきびだんごの由来・歴史・進化までを詳しくご紹介します。
天狗堂宝船とは?|七飯町発の和菓子メーカーが守る味
きびだんごを手がける天狗堂宝船の歴史や、七飯町で育まれてきた和菓子づくりの背景をご紹介します。
創業当初はカステラ製造からスタート
北海道南部・七飯町に本社を構える「天狗堂宝船」は、昭和の初期から続く地域密着型の和菓子メーカーです。
創業当初は、手作りのカステラや蒸し菓子などを主力商品として展開していました。
地元の祭りや祝い事には欠かせない存在で、地域の人々と共に歩んできた歴史があります。
昭和43年に「きびだんご」の製造を開始
転機が訪れたのは昭和43年(1968年)。
保存性が高く、家庭でも手軽に楽しめるお菓子として「きびだんご」の製造をスタートします。
これが大ヒットとなり、今では天狗堂宝船を代表する看板商品に。甘さ控えめで素朴な味わいは、世代を超えて愛され続けています。
道民に長年親しまれてきたロングセラー
北海道内のスーパーや土産店でもおなじみの「天狗堂宝船のきびだんご」。
棒状のフォルムとオブラートに包まれたレトロな見た目は、道民なら一度は手にしたことがあるはずです。
「いつものおやつ」として道民の記憶に深く根付いている、まさに郷土菓子の定番です。
なぜ北海道できびだんご?|“起備団合”に込められた開拓の精神
北海道できびだんごが生まれた歴史的背景と、そこに込められた開拓者たちの精神について解説します。
屯田兵の携帯食として生まれた背景
北海道のきびだんごのルーツは、明治時代の北海道開拓にあります。
厳しい自然と向き合いながら生活していた屯田兵たちの、携帯食・保存食として考案されたのが始まりです。
エネルギー補給ができて、日持ちも良く、持ち運びやすい…そんな実用性が評価され、広まりました。
「事に備え、団結する」意味のある名前
この北海道きびだんごは、単なる食べ物以上の意味を持っています。
その名前には「起備団合(きびだんご)」=“事が起きる前に備え、団結して助け合う”という、開拓時代の精神が込められています。
お菓子でありながら、助け合いの象徴でもあるのです。
災害時の非常食としても重宝された歴史
保存性と腹持ちの良さを兼ね備えたこのきびだんごは、関東大震災などの災害時にも非常食として注目されました。
そのため、道内では今でも「おやつ兼備え」として家庭に常備しているという方も少なくありません。
岡山とどう違う?|北海道のきびだんごはここが独自
岡山の吉備団子と北海道のきびだんごの違いを、原材料や製法、文化的背景から詳しく比較します。
原材料と製法の違い
岡山名物「吉備団子」と混同されがちですが、北海道のきびだんごとは別物です。
岡山のものは求肥ベースで、きび粉をわずかに使った丸い和菓子ですが、北海道のきびだんごはもち米・小麦粉・水あめ・あんなどを混ぜて加熱し、オブラートで包む独自製法です。
形状・包装・味の特徴
北海道のものは棒状や長方形が主流で、外側は薄いオブラートに包まれています。
噛むともっちりとした弾力とコクのある甘さが広がり、シンプルながらクセになる味わいです。
岡山の一口サイズ・個包装スタイルとは印象が大きく異なります。
吉備団子とは異なる、北海道ならではの文化
桃太郎伝説と関わりのある岡山の吉備団子が観光向けのお菓子とすれば、北海道のきびだんごは“暮らしの中に根ざした郷土菓子”です。
買い物帰りにふらっとスーパーで買える、そんな“日常”の味であり続けています。

まとめ|北海道きびだんごは“郷土の知恵と優しさ”が詰まった味
北海道にも独自の「きびだんご」があることをご存じなかった方も多いのではないでしょうか?
天狗堂宝船のきびだんごには、開拓時代から受け継がれる知恵と想いがぎゅっと詰まっています。
- 北海道開拓時代の厳しい自然環境の中で、屯田兵の携帯保存食として誕生
- 「起備団合(きびだんご)」=「事に備え、団結する」という助け合いの精神が名前の由来
- 岡山の吉備団子とは異なり、もち米・小麦粉・水あめ・あんを使用した独自製法
- 棒状・オブラート包みの素朴なスタイルで、道民のおやつとしてスーパーでも身近に販売
今も昔も変わらぬやさしい甘さで、道民の暮らしにそっと寄り添い続けているお菓子です。