旭川発・中国を走った日本の路面電車──岡田健太郎さんの著書が島秀雄賞を受賞!

戦前・戦中の中国で、日本製の路面電車が現地を駆けていた――。そんな知られざる歴史にスポットを当てた書籍が、いま鉄道界で注目を集めています。

旭川市職員であり、鉄道愛好家でもある岡田健太郎さんが手がけた著書『大陸浪人路面電車』が、島秀雄記念優秀著作賞を受賞しました。

歴史の空白を埋めるこの一冊と、岡田さんの情熱に迫ります。

この記事でわかること
  • 岡田健太郎さんの著書『大陸浪人路面電車』とその受賞理由
  • 島秀雄記念優秀著作賞とはどのような賞なのか
  • 岡田さんの経歴と鉄道への深い情熱
目次

岡田健太郎さんの著書が島秀雄記念優秀著作賞を受賞

旭川市で働きながら鉄道研究に取り組む岡田健太郎さん(50)が執筆した『大陸浪人路面電車―中国大陸を駆けた日本の電車のものがたり―』が、島秀雄記念優秀著作賞の単行本部門を受賞しました。

『大陸浪人路面電車』とはどんな本か

本書は、1899年から現代まで、中国各地で活躍した日本製の路面電車に焦点を当てています。

北京・大連・奉天(現在の瀋陽)といった都市を中心に、日本から渡った電車242両の記録を、写真・図・グラフとともに丁寧に紹介。

初版は2023年、増補改訂版は2024年12月に出版されました。

なぜこの本が評価されたのか?

研究の空白地帯であった戦前・戦中の中国における路面電車の動向に、デジタル技術と膨大な資料収集を駆使して迫った点が高く評価されました。

実際に現地に渡り、当時を知る資料や写真、さらにSNSを通じて中国の鉄道ファンと連携した地道な研究姿勢が受賞の決め手となりました。

北海道・洞爺湖電気鉄道の車両も登場

注目すべきは、北海道から中国に渡った車両の存在。

1941年に廃止された「洞爺湖電気鉄道」の車両が北京で使われていたという新事実も、本書で明かされています。

まさに、北海道と中国を結ぶ鉄道ロマンです。

島秀雄記念賞とは?鉄道界におけるその意味

この賞は鉄道ファンなら一度は耳にしたことがあるはず。

鉄道文化への深い理解と貢献が認められた著作物に贈られます。

島秀雄とは何者?新幹線の父と呼ばれる理由

島秀雄氏(1901〜1998)は、東海道新幹線の実現に尽力した元国鉄の技術者。

「新幹線の父」と呼ばれ、現代日本の鉄道技術の礎を築いた人物です。

その功績を称え、2008年に鉄道友の会が記念賞を創設しました。

賞の設立背景と目的

この賞は、鉄道に関する優れた著作物や活動を称えることで、鉄道文化の発展を促すことを目的としています。

また、次世代の研究者やファンの励みにもなるよう設計されています。

選考の仕組みと3つの部門

島秀雄記念優秀著作賞には以下の3部門があります:

  • 単行本部門(書籍)
  • 定期刊行物部門(雑誌・新聞など)
  • 特別部門(保存活動や映像作品など)

会員や出版社からの推薦をもとに、選考委員会が厳正に審査し、表彰が行われます。

これまでの主な受賞例と傾向

2024年の受賞例では、鉄道車両の復元と形態の多様性を詳細にまとめた藤田吾郎さんの著書『70系戦災復旧客車』や、芝浦工業大学附属中学高等学校による「鉄道院403号機関車」の保存活動が表彰されました。

こうした実績からもわかるように、島秀雄記念賞はプロの研究者だけでなく、アマチュア研究家や教育機関による地道な活動にも光を当てる賞であることがうかがえます。

研究を支えた岡田さんの経歴と情熱

長年にわたり積み重ねてきた岡田さんの鉄道への想いが、本書には込められています。

鉄道好きが高じて中国へ──大学から旅行会社勤務時代まで

岡田さんは幼いころから鉄道が好きで、大学では東洋史を専攻。

最初に就職した旅行会社では北京に4年間駐在し、その経験が本格的な研究の土台となりました。

SNSと現地ファンとの国境を越えた協力体制

2017年からは路面電車の研究を本格化。

写真資料の乏しさを補うため、SNSを活用し中国の鉄道ファンと交流。

現地協力者との情報交換によって、資料の裏づけと発掘を地道に進めました。

「今の時代だからこそできた研究」とは

岡田さんは、「インターネットとSNS、デジタル処理がある今だからこそ実現できた研究だった」と話します。

アナログ資料とデジタル技術を融合させた、まさに令和の歴史研究と言えるでしょう。

中国鉄道関連の著作は3作目、その積み重ね

本書は中国の鉄道に関する著作としては3作目。これまでの研究蓄積が、今回の受賞につながったとも言えます。

記事のまとめ

岡田健太郎さんが手がけた『大陸浪人路面電車』は、これまであまり知られてこなかった日中間の鉄道史に光を当てた意欲作です。

戦前の路面電車に関心のある方はもちろん、北海道や旭川にゆかりのある方にとっても興味深い内容が詰まっています。

  • 著者は旭川市職員で鉄道研究家の岡田健太郎さん
  • 戦前~戦中に中国で運行された日本製路面電車242両の記録を調査
  • SNSや現地の協力者と連携し、貴重な資料を収集・分析
  • 書籍は「島秀雄記念優秀著作賞」を受賞し、鉄道文化への貢献が評価された

歴史と鉄道の交差点に心を動かされた方は、ぜひ書籍を手に取り、当時の記憶にふれてみてください。

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